こころがまえ

 農業は、自身の努力と判断で、自然相手に生産活動を行うことのできる、他の産業にはない魅力あるすばらしい職業です。しかし、自然が相手であるため不安定な部分があり、農村生活では、その土地ならではの習慣等の違いもあることから、誰もがすぐ始められ、必ずしも上手くいくというものではありません。
 農業を始めようと思われる方は、以下のポイントを踏まえたうえで、検討してください。

1.農業とは

 農業は、サラリーマンや小売業のように始めたらすぐ収入があるわけではなく、作物や家畜を育て出荷して初めてお金が入ってきます。取り組む品目によって、収入が得られる期間は様々ですが、最低でも1年程度は生活できるだけの蓄えが必要です。
 最近は、家庭菜園に取り組まれる方が多く、「上手く作れたから農業に向いているのでは。」と思われる方もあるかもしれませんが、換金作物を栽培する農業と家庭菜園とは考え方が全く違います。
 プロの農家は、市場からニーズに的確に応えられるからこそ、商品の価値に見合った価格で取引ができるのであり、市場が求めるものを出荷できるようになって初めて自分の技術や商品が認められることになります。
 ひとつの作物を大量に栽培するのと、家庭菜園で少量を栽培するのとでは大きく違うことを、先ずは、理解してください。

2.農業での技術・能力

 新たに農業を始める場合には、ある程度経験を積んで技術を習得する必要があり、理想とする収入が得られない場合もありますので、当面の生活は楽なものではないと覚悟しておく必要があります。また各作物の季節ごとにおける栽培ノウハウは、1年に一度しか経験できないものが多いため、十分な生産量や収入を得られるようになるには、何年もかかります。

3.就農のポイント

 品目を選ぶときには、営農する地域の農協農業改良普及センターに事前に相談し、①必要な収入が得られるか、②自分にあったものなのか、③栽培の難易度、④商品としての市場価値、⑤就農予定地での販売ルート、⑥経営としての安定性、など様々な情報を組み合わせたうえで、総合的に判断することが必要です。
 「この品目で就農する。」と決めた以上は、当面はその品目を変えない覚悟が必要であり、この点が就農を成功させるうえで、重要なポイントになります。

4.家族の同意

 農業を始めるということは、単に自分がその職業に就くということだけではありません。生活環境や就農する地域の人々との関係など、家族にも様々な変化があり、子供の教育面においても、都会とは大きく異なります。都会の生活との違いを十分理解した上で、農村生活をしていくことについて、家族全員でよく話し合いを行い、家族の理解を得ておく必要があります。

5.人間関係の変化

 農業を始めるということは、その集落で生活することを意味し、家族全員が地域社会の構成員になることです。直接、農業に係る共同作業ではなく、集落の会合など様々な行事があり、集落の一員として協力していかなければならないことは沢山あります。
 農業の場合、地域住民の助け合いが必要となることが多いことも、十分に認識しておいて下さい。

6.最後に

 農業で成功を収めるには、就農する前に十分な準備を行ってきたかどうかが、大きなポイントになります。

 準備が不足したまま農業経営を開始すると、資金不足に陥ったり、栽培技術の未熟さにより収量の確保が困難になるなど、経営に行き詰まることが多いようです。また、農業法人などへ就職される場合であっても、事前に就業体験や職場見学を行うなど、自分が本当にその会社で農業へ従事することが向いているのか確認しておくことが望ましいと考えられます。